2026年6月、北中米を舞台にFIFAワールドカップが開幕した。数多くのスターが集うこの大会で、ひときわ眩い存在感を放っているのがノルウェー代表のエースストライカー、アーリング・ハーランドだ。プレミアリーグで得点王に3度輝いた”怪物”が、W杯という最大の舞台でもその凄みを遺憾なく発揮している。
生い立ち――スポーツエリートの血を引いて
エルリング・ブラウト・ハーランドは2000年7月21日、イギリスのリーズで生まれた。当時、父親のアルフ・インゲ・ハーランドはリーズ・ユナイテッドFCに在籍していた。母親のグリ・マリタ・ブラウトは元七種競技選手で、全国大会で優勝した経験を持つ。両親から優れた運動能力を受け継いだハーランドは、5歳の時に子供向け立ち幅跳び大会に参加して1.63メートルの世界記録を樹立したというから驚きだ。
幼少期はイギリスとノルウェーで過ごし、子供の頃は優れたハンドボール選手でもあったが、最終的にサッカーを選択し、地元クラブのブリュネFKでキャリアをスタートさせた。
台頭――モルデからザルツブルクへ
2017年2月、ハーランドはノルウェーリーグのモルデFKに加入した。移籍金はわずか9万ポンド。当時モルデを指揮していたのは、マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドであるオーレ・グンナー・ソルスキャーだった。6月4日、16歳10ヶ月14日でトップリーグデビューを果たすと、同年8月にはリーグ戦での初ゴールも記録した。
モルデで2シーズンを過ごし才能を開花させると、セリエAの名門ユヴェントスや父親ゆかりのリーズ・ユナイテッドからもオファーが届いたが、ハーランドはこれらを断り、オーストリアのレッドブル・ザルツブルクを選択した。2019年1月、500万ユーロの移籍金でザルツブルクへと完全移籍した。
世界を驚かせた1試合9ゴール
ザルツブルク移籍後、世界中のサッカーファンにその名を刻んだのが2019年のFIFA U-20ワールドカップだ。ホンジュラス戦で「1試合9ゴール」という、国際大会の歴史を塗り替える離れ業をやってのけた。ノルウェーU-20代表はこの試合で12-0の大勝を収め、ハーランド自身は大会のゴールデンブーツ賞を受賞した。
クラブでの輝かしい実績――ドルトムント、そしてシティへ
ザルツブルクでの活躍でヨーロッパ中のビッグクラブが争奪戦を繰り広げた結果、ハーランドはブンデスリーガの強豪ボルシア・ドルトムントへ移籍。そこでも圧倒的な得点力を発揮し続けた。
そして2022年夏、プレミアリーグの覇者マンチェスター・シティへ移籍。加入1年目の2022-23シーズンには、プレミアリーグ得点王、UEFAチャンピオンズリーグ得点王、ヨーロッパ・ゴールデンシューといった主要タイトルを総なめにした。今シーズンもプレミアリーグで27ゴールを挙げ得点王に輝いており、その圧倒的な得点力は衰えを知らない。
悲願のW杯出場――28年ぶりの本大会
クラブレベルでの成功と国際大会の経験のギャップがハーランド最大の課題だった。2022年のカタール大会予選では、ノルウェーは健闘したものの3位に終わり予選敗退。悔しさが刻まれた。
しかし、2026年ワールドカップ欧州予選でノルウェーはその悔しさを完全に払拭した。ハーランドを中心に再編されたチームは8戦全勝で突破。強豪イタリアに4-1で快勝するなど圧倒的な強さを見せ、1998年大会以来28年ぶりとなるワールドカップ本大会出場を確定させた。
ハーランド自身は予選8試合で16ゴールという驚異の数字を叩き出し、2018年ロシア大会予選でレヴァンドフスキがマークした欧州予選最多得点記録に並ぶ快挙を達成。さらに8試合連続得点という偉業も成し遂げた。
北中米W杯グループステージ――2試合で4ゴールの大爆発
第1戦 イラク戦(4-1勝利)
試合前、ノルウェー代表のソルバッケン監督はハーランドを「世界最高のゴールスコアラー」と評した。そして背番号9は、ワールドカップデビュー戦でその言葉をすぐに証明してみせた。前半に抜け目なく2ゴールをマーク。ノルウェーはボストン・スタジアムでイラクに4-1で勝利した。 FIFA
試合後、ハーランド自身は喜びを率直に語った。「1点目は良いゴールだったし、2点目はもっと良かった。ファンタスティックだよ。ワールドカップデビューを飾り、ノルウェーの28年ぶりのW杯で勝てて、とても誇りに思っている」
第2戦 セネガル戦(3-2勝利)
6月22日、ニューヨークでの第2戦でもハーランドは大暴れした。ノルウェーはセネガルを3-2で下し、2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。
後半3分、ウーデゴールがピッチ中央を切り裂いてハーランドにパス。エースが左足で沈め今大会3得点目。さらに58分、混戦からのラストパスを右足ダイレクトで押し込み4得点目とした。
ハーランドはW杯デビューから2戦連続複数得点という史上6人目の快挙を達成した。試合後のハーランドのコメントは至ってシンプルだ。「今日もまた特別だった。また素晴らしい夜だった。本当に誇らしく思う。ワールドカップはいいね!」
ノルウェー代表での驚異的な数字
代表では2019年のデビューから52試合59得点。驚異的な得点ペースをW杯という夢の舞台でさらに加速させている。チームメートのサンデル・ベルゲも彼の凄さをこう表現している。「アーリングはとても効率が良くて、決定的だ。試合が始まると常にハングリーなんだ。アニマルなんだよ」
グループ第3戦へ――フランスとの首位決戦
グループリーグ最終戦(6月26日)は、強豪フランスとの首位決戦が控えている。ハーランドは今大会の得点ランキングでも上位に位置しており、エムバペやメッシとともに得点王争いを演じる怪物は、ノルウェーを1998年以来の8強以上へと導けるか。
彼がW杯という最大の舞台でサッカー史に名を刻む瞬間を、世界中のファンが固唾を飲んで見守っている。
最終更新:2026年6月25日

