NASA アルテミス計画 特集
人類が再び月へ――アルテミスII成功が拓く、2028年の月面着陸への道
アルテミスIIとは何だったのか
アルテミスIIは月面着陸を行わない「フライバイミッション」でした。オリオン宇宙船が月の裏側まで飛行し、自由帰還軌道を描いて地球へ戻るルートを採用。アポロ13号が緊急時に使用したものと同じ軌道設計で、月と地球の重力を最大限に活用しながら往復しました。
このミッションの本質は「技術検証」にあります。有人状態で生命維持システム・耐熱シールド・深宇宙放射線対策・通信システムなど、あらゆる要素を実際の環境下で確認することが目的でした。飛行距離は406,771kmに達し、人類史上最遠の飛行記録を更新しています。
クルー4名 — 多様性と記録
リード・ワイズマン
司令官 / NASA
海軍パイロット出身、ISS船外活動2回経験
ビクター・グローバー
操縦士 / NASA
有色人種初の月圏到達飛行士
クリスティーナ・コック
ミッションスペシャリスト / NASA
女性初の月圏到達。宇宙連続滞在328日記録保持
ジェレミー・ハンセン
ミッションスペシャリスト / CSA
米国市民以外で初の月圏到達。カナダ空軍パイロット
宇宙飛行士の声 — インタビュー・発言録
「月は、地球で起きた出来事の痕跡をとどめた”記録媒体”のような存在です。地球では風化やプレート運動によってその記録が消えてしまっています。月を調べることで、太陽系がどう形成されたのか、ほかの恒星系で生命が存在する可能性についても理解が深まるはずです」
クリスティーナ・コック
2026年1月 打ち上げ前記者会見にて(WIRED.jp 掲載)
「ドッキングハッチから月が見えていて、本当に美しい光景です」
クリスティーナ・コック
地球・月の中間点通過時、管制塔との交信にて(AFP 2026年4月4日)
「月へ行こう!」
リード・ワイズマン 司令官
打ち上げ直前、クルーへの呼びかけにて
家族への別れ際、ビクター・グローバーは手をハート型にかざして「君たちを愛している」と声をかけました。アポロ17号のムーンウォーカー、チャーリー・デューク氏も「あなたたちを応援しています」とメッセージを寄せ、世代を超えた宇宙への意志が受け継がれました。
計画スケジュールの最新状況(2026年4月時点)
| ミッション | 時期 | 主な内容 | 状態 |
|---|---|---|---|
| アルテミスI | 2022年11月 | 無人オリオン宇宙船の月往復試験 | 完了 |
| アルテミスII | 2026年4月 | 有人月フライバイ(4名)、生命維持システム検証、人類最遠飛行記録更新 | 完了・帰還 |
| アルテミスIII | 2027年予定 | 地球低軌道でのドッキング・推進剤補給技術検証、月面探査服テスト | 準備中 |
| アルテミスIV | 2028年予定 | 初の有人月面着陸(月南極付近)、6.5日間の月面滞在、船外活動2回以上 | 計画中 |
※2026年2月、NASAのアイザックマン長官がスケジュールを大幅改定。月面着陸はアルテミスIVへ移行。月周回宇宙ステーション「ゲートウェイ」は2026年3月に建設停止が発表された。
ミッション成功のカギ — 技術的挑戦
耐熱シールド問題
アルテミスIで100か所以上の異常剥離が確認されたまま有人飛行へ。アイザックマン長官が「追加分析で乗員を保護できると判断」と表明し、飛行を承認した。
深宇宙放射線対策
地球磁気圏の外では太陽粒子イベントが致死的な被曝につながるリスクがある。NASAとNOAAが24時間体制で太陽活動を監視。火星探査機パーサヴィアランスを活用した先読み観測も実施した。
大気圏再突入
時速約4万kmで大気圏に突入、約1,650℃の高温に晒される6分間の通信途絶(プラズマ遮断)を乗り越え、2026年4月10日(日本時間4月11日)に太平洋へ着水。全員無事帰還した。
日本の役割と日本人宇宙飛行士の月面着陸
日米両政府の合意により、日本人宇宙飛行士2名がアルテミスIV以降のミッションで月面に降り立つことが正式決定しています。JAXAの諏訪理飛行士と米田あゆ飛行士が有力候補として訓練中。米国人以外で月面着陸するのは日本人が世界初となる見通しです。また、トヨタが開発する有人与圧ローバーも2028年以降の月面探査で活躍する予定です。
次のステップ — 2028年の月面着陸に向けて
アルテミスIIの成功により、NASAは2028年の有人月面着陸(アルテミスIV)へ向けた最終技術チェックを完了しました。月南極付近への着陸では、水(氷)の探査が主要ミッションとなります。2026年3月に発表された新方針では、月面基地の建設と毎年の有人・無人探査実施、2036年ごろの長期月面滞在を目指しており、火星有人探査への足がかりとする長期ビジョンが掲げられています。



