はじめに
石油元売り大手の出光興産が、大きな変革期を迎えています。ガソリン需要の長期的な縮小が見込まれるなか、同社は「脱炭素時代の素材メーカー」への転換を加速。一方でイラン情勢など地政学リスクへの対応も迫られています。本記事では2026年の最新動向を整理します。
① 最大のニュース:全固体電池工場の建設スタート
出光興産は2026年1月29日、電気自動車(EV)の性能向上が期待される「全固体電池」の基幹素材を生産する工場の建設を開始したと発表しました。場所は千葉事業所(千葉県市原市)の敷地内です。 Nikkei
トヨタ自動車と協業し、2027〜2028年に全固体電池を搭載したBEV(電気自動車)の実用化を目指しており、この工場で製造される固体電解質がトヨタ向け全固体電池に使用される予定です。 PR TIMES
さらに一歩踏み込んだ動きも。2026年2月27日には、固体電解質の重要な中間原料である「硫化リチウム(Li₂S)」の大型製造装置の建設も決定。蓄電池3GWh/年相当という世界トップクラスの製造能力を目指し、原料から製品までの一貫したバリューチェーンを構築する方針です。総事業費は約213億円で、うち約71億円が経産省から助成される見込みです。 Gogo
なぜ出光が全固体電池なのか?
出光興産がこの分野を手掛けるのは、石油精製によって年間数十万トンの硫黄を調達・扱う技術があるためです。全固体電池の固体電解質には硫黄が使われており、既存インフラを活かせる強みがあります。 Nikkei
② イラン情勢で石油供給を縮小
2026年3月18日、出光興産はイラン情勢の長期化を見据え、石油製品の供給量を減らしていることを明らかにしました。米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、石油元売りが供給縮小を公表したのは初めてです。同社は「安定供給の確保と影響の最小化に向けて取り組んでいる」と説明しています。 Bloomberg
③ ベトナムへ原油を融通
2026年4月28日には、出光興産が原油をベトナムに融通することが判明しました。同社が出資するベトナムの製油所への供給や日本政府の要請が背景にあるとみられます。 Bloomberg
④ 経営指標にROICを初導入
財務戦略の面でも変化が起きています。出光興産はROIC(投下資本利益率)を経営指標として初めて導入し、事業ポートフォリオの効率化を進める方針を打ち出しています。石油精製から素材・エネルギー転換事業へのシフトを加速する中で、収益性の高い事業に経営資源を集中させる狙いがあります。
まとめ:石油会社からエネルギー素材会社へ
| トピック | 内容 |
|---|---|
| 全固体電池工場着工 | 千葉事業所で2026年1月建設開始、2027年完工予定 |
| トヨタとの協業 | 2027〜28年EV向け固体電解質を供給 |
| 硫化リチウム装置 | 世界トップ級の製造能力、国から71億円助成 |
| イラン問題 | 石油製品の供給縮小を初公表(2026年3月) |
| ベトナム原油融通 | 出資先製油所・政府要請で対応(2026年4月) |
| ROIC導入 | 経営効率化・事業再編を加速 |
出光興産は今、100年続いた石油会社のビジネスモデルを根本から作り変えようとしています。特に全固体電池分野での動きは、トヨタとの連携も含め日本の産業競争力を左右する重要な局面に入っています。今後の決算発表(2026年5月12日予定)でも、この転換戦略の進捗が注目されます。
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